質問箱2020年6月22日

「アンティゴネーのような古い神話を何故哲学は使うの?例えばデリダの贈与のように」
これは説明するのにシェリング哲学のような古いドイツ哲学まで遡ります。哲学の世界では化学のような化学式のような各物質の構成の様子、元素の組み合わせを示すようなものはありません。哲学や文学のような思惟や思索の世界では一番それに近いものは「神話」になります。人間の性や本質をよく表していると思われています。ヴォルテールは「歴史哲学」で神話を取り上げていますが、カトリックの権威主義と対立化をさせています。Catholicのような宗教は権威がありますが、神話には存在しません。それこそ純粋な
化学式のような存在です。勿論、神話の引用を好まないグループ、例えば啓蒙主義のウェーバーもいます。シェリングは真理への道と、神々を定立する運動の循環という二つの側面からプロセスを進めており、ヘーゲル哲学「精神の現象学」の例え話と繋がっていきます。
恐らく、デリダのアンティゴネーの説明を読んでいるということはヘーゲル読解ということになります。現在の研究ではデリダのヘーゲル研究はまだ充分ではないとは言われています。仰っている著作はデリダ『弔鐘 (Glas)』だと思われますが、この死者をいたみ、冥福を鳴らす鐘は西洋ならではのキリスト教という権威のある体系、絶対宗教下にあるからこそ出来た哲学です。家族の主題は「宗教の止揚」の問題から、つまりこれまで見てきた哲学の始源への問いがデリダのこの弔鐘を読み解く鍵だと思われます。ただ難しいのが読者がどの程度の信仰心を持ち、どの宗派に属しているかによって三位一体の意味、イエスキリストと神との和解を捉えているかで全くデリダの読み方は変わってしまいます。もしかすれば同じカトリックでも、教皇や神学者によってとらえ方が様々で困難かと思います。シンプルにまとめてしまえば、アンティゴネーは兄への宗教的義務と埋葬という習慣と掟(法律)の対立から成るものです。それはヘーゲル的解釈からすれば、現象学への目標であり「絶対知」です。デリダのこの著作は更にイエスの死という悲劇から哲学が始まり、ヘーゲル的弁証法を試みていると思います。それによって、アンティゴネーのは誰に該当したのか、そういう話になっているかと思います。
※アンティゴネーとアンティゴーネと両方表記可

質問箱2020年6月18日

只今リアルで会ったことある人限定で質問箱URLを試験的に送っています。
今回は届いた質問の答えを書いていきます。

「デリダとかフランス哲学において贈与は重要論点かどうか、イサクを捧げる箇所を引用したりしていますが。資本主義の贈与とは」

 はい、贈与はフランス思想の中でも歴史が長いものです。キリスト教カトリックの
恩寵からデリダまで贈与については色々と言われています。

 デリダの贈与と、イサクの贈与が並べられる理由は、敬虔な信者であるアブラハムが息子イサクを神の命令によって、捧げようと(殺害)しようとしたが、結局最終的には神がアブラハムを信用し、イサクの命を持っていかなかったという点でしょう。古典ギリシャ経済のエコノミー、出て行ったものが必ず帰ってくるという円環を否定するための比較だとは思います。ただし、アブラハムに関しては聖書的解釈に左右されます。キリスト者は息子の魂が地上に残されたと捉えますが、哲学者は魂より肉体の存命を重視します。そういった認識のズレはあるかと思います。あともう一つズレが生じるのはキリスト教では啓示によって開示が行われるものですが(アブラハムに天使が降りて啓示を受けてイサクが助かる、よって開示を受ける)哲学概念では逆で(元々開示があり、イサクは助かる運命であったが、試された「啓示」)という真逆の見方がありますし、まだ論争は続いているようです。
 資本主義と贈与に関してですが、日本とフランスの資本主義は違います。国の保証から離れて民間でやることがうまくいくのか、民間がしっかりと稼いで国のお世話になることが良いのか、どちらも資本主義と言えることであり、国や国民性にも左右される難しい問題だと思います。今回のコロナウィルスの保証のように手当を受けられれば資本主義によって贈与を受け取れたともいえるし、破産してしまい、保証も受けられない状態であるとすれば資本主義の失策ともいえるでしょう。フランスの場合は資本主義によって国と連携し社会保障を充実させ、災害時や国難のときに国民に保証出来る「贈与」を目指したいということではないのでしょうか。日本の場合は意見が分かれていると思います。可処分所得が随分と小泉政権下から減り続けているので、とりあえず現金が欲しいというのが国民の願いであり、国にお世話になるぐらいなら、自分で稼いだ分は自分で責任を持って管理したいという人が多い気がします。だからこそ減税を望む声が多いのかと。


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