私の想像力は上書きされては捨て去って行く。それを忘却と人は言うのかもしれないが、私は瞬間と呼ぶ。残された過去情景はまるで永遠を夢見ているようだ。撮影は10年前、私が現象学を選ぶ写真となった。レンズとフィルム設定だけで偶然撮れたこの写真は、こうなると予見をせずに、香りが奮い立つように、花々が私の目の前に現れた。私が接近しないと、世界というものは私の意識内に形成されることがないのに、出来上がりは私の意識を超越していた。
まるでカメラが感覚質を持ったように、心を持ったようになったのだ。
此処には私自身の記録が無い。私がどんな格好をしていたのか、何を考えていたのか、どんな表情をしていたのか。覚えているのは杖をついていたことだけだ。杖が煩わしく、視線が今よりも低い。私が居ないことによって、私らしさとなった。人は瞬間に嘘をつくから、無理して笑うから、本当に記録を残したかったら、自身を消してしまうべきだ。
虚飾の無い純粋さが其処に生まれる。
L’intuition De L’instant.
I didn’t edit the photo these.