Il était une fois un homme qui avait de belles maisons à la ville et à la Campagne, de la vaisselle d’or et d’argent, des meubles en broderie, et des carrosses tout dorés ; mais par malheur cet homme avait la Barbe bleue : cela le rendait si laid et si terrible, qu’il n’était ni femme ni fille qui ne s’enfuît de devant lui.
「昔々、町にも田舎にも美しい家を持ち、金や銀の食器、刺繍の家具や、金の四輪馬車を持つ男がいました。けれども、不幸なことに、この男には青髭がはえていました。そのため、とても醜く恐ろしく見え、どんな女も娘もその前から逃げ出させずにはいられませんでした」(訳:私)
シャルル・ペローとグリム童話と両方ある「青髭」という話。今回はペロー版についてですが、青髭の妻が再婚するた度に行方知れずになっていると知っていながらも、隣人の高い身分の婦人の妹娘は彼の内面を気に入り結婚します。若き妻となった妹娘に青髭は沢山の部屋の鍵を渡します。そして一つだけの鍵について、「この鍵の大廊下の下にある小部屋は絶対入ってはいけない、入ってしまえば怒って私はお前をどうするか分からない」と言って渡しました。
しかし、若き妻は夫が留守の間に、どんな豪華な部屋を自由に行き来するよりも、好奇心に負けて禁じられた部屋を見てしまいます。そこには、床一面が凝固した血でおおわれ、前の妻らしき女の身体が頭部を切断されて壁際にくくりつけられていたのです。
若き妻は思わず鍵をその血の床に落としてしまいます。急いで拾い上げますが血が全く落ちません。青髭が予定よりも早く帰ってきてしまい、その禁じられた部屋に入ったことがバレてしまいます。青髭が今までの妻のように首を切り落とそうとすると、若き妻は、
donnez-moi un peu de temps pour prier Dieu.(神様にお祈りする時間を少しください)
と言います。この時間稼ぎのようで、宗教的な意味を持つこの瞬間は素晴らしい。この後に若き妻の兄が助けにきてくれ、死なずに済みます。
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実写版は、この原作を読み上げる現代人の姉妹と、映画オリジナルの脚色のストーリーとなっています。原作では裕福な家庭の設定でしたが、実写版では、父親の死をきっかけに、私学のカトリック学校を退学させられた貧しい姉妹となっています。
原作者、シャルル・ペローは有名なルイ14世に仕えた作家で、貴族の読み物用に作られた民話と庶民への接点を作り上げたと言われています。そして青髭の青という意味、フランス革命以降、青は「自由」や宗教的意味でも神聖という意味がありますが、ペローは1628~1799年に生きていたので、フランス革命前の「青」の価値観で書かれていると思われます。例えば、フランス語の「青」はギリシャ語由来のκυανοειδης:暗青色、アッシリア語の瑠璃を意味することや、もともと青ざめる、恐怖に感じた、顔色が悪いなどに使われる「青」だということになります。映画では「一番信用出来るかもしれないこの少女まで秘密の部屋を開けてしまった」というような、
人間の普遍的な何らかしら存在する欲求についての、
リアリズムに仕上がっています。
見ているだけでも美しい実写版なので是非。
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